中学校の部

  自然の恵み
	     四万十町立窪川中学校
               三年 久保田 聖 那 

 僕の家は四万十川源流の里山にあり、周囲には見渡す限り山々と水田が広がります。
 祖父の田は最も身近な遊び場で、物心ついた頃から水田から出たての尻尾付き蛙を虫かごいっぱいに集め、大喜びしていたそうです。
 祖母の畑ではモグラ穴にぎゅうぎゅうに詰まった親分サイズのトノサマガエルを見つけ格闘の末、引っ張り出したこともあります。
 春の山では祖父と筍掘り。採れたてを煮物にすると山の香りが最高!この時期にしか味わえない旬の味覚に箸が止まらなくなります。
 初夏には父と用水路に通い、ヤゴを掬いました。初めて見た羽化の感動は忘れられません。小さなヤゴの背中がぱっくり割れ、まるで圧縮されたスポンジが膨らむように大きなヤンマが出て来る光景に、目を見張りました。
 梅雨の頃には、家族でホタル狩りにも出掛けました。家のそばの谷川を無数の蛍が飛び交い、その光が周囲の水田に映り、一際輝きを増します。時間を忘れ、星が舞い下りて来たような幻想的な世界に引き込まれました。
 夏には、川で手長エビを追い掛けました。初めて捕まえたのは、何と指釣りです。石の下のハサミをくすぐると挟まれ、川の主サイズの雄を釣り上げたのです。(びっくり!)と(痛い!)と(嬉しい!)が同時に駆け巡った感動は、脳裏に焼き付いて離れません。
 夜にはカブト、クワガタに出合える場所を求め、足繁く通いました。決して真似できない自然の造形美は「かっこいい!」の一言に尽き、僕を魅了して止みませんでした。
 タイドプールでは小魚やスジエビ、貝やヤドカリを見つけ楽しみました。岩の一部が急に動き出した時にはびっくり!正体は体中に海草を貼り付けたイソクズガニでした。岩の奥のハサミと魚捕り網で綱引きし、巨大なモクズガニを引っ張り出したこともあります。
 海辺にある父方の祖母の家では、堤防釣りも楽しみました。釣り上げたフグが風船のように膨らんだり、大きなガザミを釣り上げたり、家族で大笑いしたことも度々です。
 山、田畑、川、海。豊かな自然を身近に育った僕は、各々の場所で四季折々の魅力を満喫し、自然の素晴らしさとともに様々な恵みを実感してきました。自然の中で味わってきた一つ一つの体験が宝物。その感動は、中学生になった今も、僕の心で輝き続けています。
 その豊かな自然を支えているのは森林です。きれいな空気を生み出し、水を蓄え、土壌や川や海までも豊かにする森林は、全ての命の源です。環境問題が深刻な昨今。地球温暖化を防ぐ役割も果たす森林は、世界規模で減少傾向にあります。今こそ森林の偉大さを見直し、守る必要があるのではないでしょうか。
 名前も顔も知らない遥か昔から、先祖が大切に守り続けてきてくれた森林。僕達には、それを未来に引き継ぐ責任があると思います。豊かな自然の恵みを、決して絶やさぬように。