中学校の部  

  沢渡茶と出会って
      
         高知市立旭中学校
           一年 マドン・ティリー
 
 「温かいお茶をどうぞ。」
 「あっ、おいしい!」
 この一言から始まった出来事がきっかけで私の将来の夢や自然に対する思い、理解力が変化しました。二年前、茶農家の岸本憲明さんがつくっている「沢渡茶」と出会いました。その頃、緑茶はあんまり飲んだことがなくて、香ばしくて優しい味がする沢渡茶を飲んだ瞬間、私は沢渡茶が大好きになりました。
 岸本さんは高知県仁淀川町の沢渡でお茶作りに励んでいます。過疎化、高齢化が進み、茶農家を辞める人も多い中、伝統ある沢渡のお茶作りが途絶えてしまうと危機感を持ち、おじいちゃんの茶畑を受け継いで茶農家になったのだそうです。
 綺麗な緑色をした茶畑と、清らかな仁淀川が流れている山奥の自然豊かな場所。私はどうしても行ってみたくて、去年に家族で沢渡の茶畑を見に岸本さんを訪ねに行きました。
 そこで実際に茶畑を見せてもらうと、思ったより急斜面で驚きました。過酷な労働の中、愛情を込めて汗を流しながら一生懸命にお茶を育てている、岸本さんの姿が思い浮かんできました。それと何年間か放置されている樹と、岸本さんが育てている樹を比べると、放置されている樹は手入れするのだけで大変そうでした。自然を大切に育てるのは素敵だけど、とても大変なことだと思い知らされました。
 私は沢渡の歴史にも興味を持ったので、岸本さんが沢渡の歴史の本を貸してくれました。先人たちがお茶作りをする中で沢山の失敗や苦労があったそうです。先人たちのおかげで今の沢渡茶があることに感動しました。岸本さんも十年前のお茶作りを始めたばかりの頃は、特に天気の関係でどのタイミングで世話をしたり、肥料をあげたりしたらいいのかを考えるのに苦労したと言っていました。このことから本当に自然と上手に付き合うのは難しいということが、すごく伝わってきました。
 そして私は沢渡での経験から、自然のことをきちんと知ってあげることも大切だと思いました。鳥、草花、天気等に興味を持つようになり、図鑑を読んで環境問題や絶滅危惧種などについて深く知りました。生き物を観察しているうちに、何だか偉大なものに囲まれているようで自然を尊敬するようになりました。私達人間は今まで地球温暖化や色々な自然破壊をして、自然に悪影響を及ぼしていました。そんな過去を反省して、人間はもともと自然の一部だということを、当たり前だけど忘れないで生活しようと思いました。
 私は沢渡茶との出会いがなければ、こんな発見もできなかっただろうなとつくづく思います。私はこの出会いを大切にし、自分の子供や孫にも自然からの贈り物は素晴らしいということを知らせたいです。これから私は先人たちが造り上げた大地や自然に感謝し、尊敬する岸本さんと協力して、沢渡の茶畑を守っていける茶農家になりたいです。