中学校の部  

  自然とスマイルラン
     
         高知県立高知国際中学校
           二年 上 岡 円 嘉
 
 「この道、まだまだ続くな。」
 「本当に長い。くねくね道だらけ。」
 私は、待ちくたびれていた。弟は、身を乗り出し、まだかまだかと地図とにらめっこ。母は坂道に負けないよう、力強くアクセルを踏み、ワイパーを最大限に動かしていた。
 私達は、奥四万十トレイルレースin松葉川へ行く途中だ。この日はあいにくの雨で、雨に打たれながら、道をかけあがる。山道はくねくね、でこぼこしていて、まさに「田舎道」。しかし、自然が作り上げてきた風景は幻想的な空間を生み出していた。がたがた道ながら、ようやく会場に着いたときは、肩の荷がおりひと安心した。一時間半も自然と向き合いながら道を通るのは初めてだった。
 次は、自然と共に走る。あのような山道を三キロメートルも走るとなると、とても緊張した。しかも、雨のため、地面はべちゃべちゃですべって転んでけがをしそうだった。そうしているうちに、スタート時間が近づいてくる。弟は冷えて固まっていた。
 「ヨーイ」
 心の中がぞくぞくひやひやした。
 「パフ。」
 ホイッスルが響き渡った。私は山の中に突進した。森の中に入ると、私達が日頃生活している世界とは違った神秘的な雰囲気に包まれた。そこら中緑がいっぱいで、心が和まされ、最高の場所だった。空高く上る木は果てしなく続くように感じ、つい見とれてしまった。自然に囲まれ、ビチャビチャという足音と共に、リズミカルに走ることができた。そのまま気持ち良くゴール。順位は何と三位で、今までに感じたことのない、すがすがしい気持ちだった。自然と一体になって走れ、ファンタスティックな旅となった。
 次いで、弟もゴールし、低学年の部で一位だった。白い歯を見せ、ほほえみながらガッツポーズをしていた。すると、母とカッパを着た三歳の弟が、
「ねーね。おつかれ。早かったね。」
とびしょぬれの体で言った。自然に体がほっこりした。びしょびしょになってまで応援してくれたから、上位にたどりつけた。心の底から感謝した。心がオレンジ色に輝いた。
 その後、松葉川温泉に入った。硫黄の香りのするお湯は、肌がすべすべになった。肩の力が抜けて、ほっとし、まるで雲の上にのっているような感覚だった。日本最後の清流四万十川。露天風呂からながめる、その川は、人々を幸せにしてくれるまほうのようなものをもっていた。だから、世界へと四万十川の情報を発信し、観光客が増えてほしい。
 おなかのチャイムが果てしなく鳴っていた。あったかご飯をもぐもぐ食べていると、弟が、
「楽しかった。次も一位とりたい。」
と満点笑顔で言っていた。自然と走ることは、走りながらパワーをもらえる貴重な時間だと感じた。