中学校の部  

  未来への約束
     
         土佐市立高岡中学校
           三年 石 元 萌 愛
 
 「ザー、ザブーン。」毎日違う顔をして、いつまでも眺められて、心を落ちつかせてくれる海が、今日も美しい音色で歌い続けている。空の青とは違う海の青とのコントラストが美しい。しかし、そんな海はまた、時として、激怒にも似た形相を見せつける。
 私が四歳の時、「明日は釣りに行ってくるからね。」と言って出かけた祖父が、帰ってこなかった。そしてもう、二度と会うことはできなくなった。祖父の乗った船が、高波にさらわれ、転覆したのだ。
 祖父の大好きだった海が、祖父を襲った。消えた船と共に、私の心は深く沈んだ。しかし、「海がおじいちゃんと友達になりたくて連れていったのかもしれないね。」と言ってくださった方がいた。もしかしたら、祖父は、今は大好きな海と一緒にいられて嬉しいのかもしれない。そう思っている。
 祖父とは、よく家の近くの山に登って、山菜を採ったり、野イチゴを摘んだりして過ごした。その山に登ると、祖父との思い出がよみがえり、また一緒に登りたいなあと思ってしまう。私は小さかったが、その頃のことは鮮明に覚えていて、中学三年となった私がまた悲しみにくれる。
 それから二年後の冬が終わりを告げようとした、三月十一日、東北を中心に地震が起こり、大津波が一帯を襲った。こうして東日本大震災は何千人、何万人もの尊い命を奪い、凄まじい状況がメディアを通じて私たちの前に繰り広げられた。幼い私でも強い衝撃を受け、胸が苦しくなったことは頭から離れない。
 自然災害は、この七月にも、熊本をはじめとする九州地方に襲いかかった。豪雨は濁流となり、また命は奪われた。ご冥福をお祈りしながら、それでも私は、自然が大好きで、自然に引き寄せられるのは何故だろう。父と船で釣りに行く。家族で山道を散歩する。
 それはきっと、海や山に行けば、祖父に会える、話を聞いてもらえる、何かのアドバイスがもらえると思い安心できるからだろう。だから、嬉しいときも悲しいときも会いに行きたくなる。
 いつも見守っていてくれる祖父に恥じないように、自分に誇りを持てる人生を歩みたい。それは祖父への一番の恩返しだと信じている。
 私の祖父をはじめ、多くの命は海へ帰ったが、海を愛する気持ちを私は忘れたくはない。
 自然と共に生きる-私を豊かに育んでくれた、美しい海、山、川・・・とのこの大切な約束を私は、未来へ向けて結ぼうと思う。